千葉市 船橋市 精神科 心療内科 北林医院分院

おとなのADHD

かたずけられない女たち、で一気に有名になりました。ADHDとは誰もが持つ不注意、多動性、衝動性傾向を生来過剰に持っている人々で、このために社会生活を行う上で重大な支障が生じ、本人や周囲の人が困ったなと感じるような状態を呈する病気のことをいいます。生来の脳神経発達のかたよりの一つです。その人の人間性とか知能の問題とかではありません。
この「支障」とは、「あの人ってKYじゃない?」というような状態ではなく、明らかに本人にとってハンディキャップを生じている状態をさします。

次にチェックリストをあげます。該当する項目が多いなあ、と思ったら医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

ADHDチェックリスト

〈不注意〉
  • ●しばしばケアレスミスをする。細部を見逃したり、仕事がずさんであったりする。
    さぼっているわけではない。
  • ●講義や会話、あるいは長い文章を読むことに集中し続けることがむずかしい。
  • ●人の話を聞いていないように見えるが「ちょっと、今なんて言ったか聞いてる?」と尋ねるとちゃんと答えられる。要するに他人からは上の空のように見える。
  • ●仕事を始めてもたちまち集中を失い、すぐにわき道にそれる。そのために社会的な活動を最後までやり遂げられない。これは反抗によるものではない。
  • ●連続する作業を順序良くやり遂げることがむずかしい。用具は散らかっている。人の何倍も仕事に時間がかかり、締め切りに間に合わない。
  • ●学業や宿題、レポート作成や書類を完成させるといった精神的努力の持続を要する課題に従事することを、避ける。(いやいや行う、というレベルも含める)
  • ●しばしば物をなくす。
    (例)学校の道具、筆記用具、本、財布、鍵、書類、メガネ、携帯電話
  • ●ほかの刺激があると簡単に気が散ってしまう。大人では、無関係な考えが浮かぶことが多い。
  • ●しばしば忘れっぽい。
    (例)用事、折り返しの電話をすること、会計をすること、約束したこと。
〈多動性〉
  • ●しばしば手足をそわそわ動かしたり、とんとんたたいたり、打ち鳴らしたり、椅子の上でもじもじしたりする。
  • ●学校、会社、あるいは座っていることを求められる場面で、自分の席を離れてしまう。
    「トイレ」「いやちょっと」といって中座することが多い。コンサートや学会で演題の切れ目ごとにロビーに出たりする。
  • ●しばしば不適切な状況で、走り回ったり、高いところに登ったりする。大人では「落ち着かない感じ」がするような気がする程度の場合がある。
  • ●静かに遊ぶことができない。とにかくうるさい。その人が動いた後に騒音が残っている感じ。
  • ●レストランや会議で長時間じっとしていられない。落ち着きのない人、じっとしていられない人と思われる。
  • ●しばしばしゃべりすぎる。
  • ●人の言いかけたことを代わりにしゃべって完結させたり、会話において「許可なく話し始めたり」、あるいは会話で自分の番が待てない。
  • ●一列になって順番を待つのが難しい。大人の場合は、並ぶことを避ける。たとえばディズニーで人気アトラクションには並ばず、待ち時間0のアトラクションのみ行 こうとする。
  • ●しばしば人の邪魔をする。相手の物を許可なく使い始める。他の人の行っていることに割って入ったり、取り上げてしまったりする。

不思議なことにゲームには集中できます。ゲームでは次々に新しい刺激が与えられるので、気をそらされることがないのです。これは大事なポイントです。

ADHDの頻度は3-5パーセント、男女比は1.6で男性のほうが多いです。おとなの有病率は2.5%。成人になると衝動性が減り、不注意が問題の中心になるため逆に女性のほうが有病割合があがります。遺伝率は70-80パーセントです。成長に伴い症状の消褪が30%にみられます。

ADHDの症状には次のようなものがあります。

  • ●対人関係をうまく築けない
  • ●学業上問題が生じる
    学習障害をきたす場合もある
  • ●(いつも叱られているので)自己評価が低くなる
  • ●一生懸命やってもうまくいかない。ずっと生き辛さを感じて生活してきた。
  • ●家族が対応困難と感じる

といったものが起こりえます。

社会に出ていくにつれ生活の困難は著しくなります。
子どものころは守られた環境に生活しており、物事への責任は大したものを追わないため、ADHDであることがそこまで大きく問題にならないケースもあります。しかし社会に出て、より複雑な環境にさらされ、責任感が増し、いろいろな負担をしなければならない状態になると、深刻な障害として、症状が顕在化してきます。
近年大人の発達障害、が話題になっているのも、同じ論理によるものです。

大人になってからの症状としては
1)実行機能障害
●情報を適切に処理し整理できない
●仕事を完結できない
●ストレス耐性がひくい
●同僚と仕事ができない
2)気分の調節をうまくできない
3)対人関係をうまく結べない
といったものがでてきます。

患者さんの声としては、「わざとやっているんじゃなくて、一生懸命やっているのに、うまくできないんだよ」「小さい頃はそういう性格かと思っていたけど、大人になっても治らないから、自分は本当にだめな人間なんだなあと思った」というのがあります。

努力不足から今の状態になっていると思い込むことが多いのですが、病気の症状なので自分を責めなくてよいのですよ。

主婦ですと家事育児の段取りが悪い→虐待に至るケースもあります。
学業上でも問題はあり、高校生ですと、中退、退学処分、定額、留年の割合が健常児に比べて優位に高いです。
解雇される、頻繁な転職の割合はオッズ比で3倍です。

ADHDではないかと疑うサインとしては、忘れっぽい、記憶できない、頻繁な転職歴、上司とうまく折り合えない、といったものがあります。その際、上記チェックリストを改めてやっていただければと思います。

ADHDの生活上の問題としては、
●朝目覚めがよくない
●遅刻が多い。
●段取り悪い
●失言多い
●夜は夜更かし
●なくしものが多い
●交通違反や交通事故が多い
●異性関係の乱れ
●転職・解雇が多い
●酒やギャンブルにのめりこむ
●暴飲暴食
●クレーマーになる、DV、虐待
等が起こりえます。

ADHD的な状態が実はいいところもあるということもできます。
注意困難→好きなことへの好奇心、探求心が活発である
多動性→エネルギッシュ
衝動性→ひらめきがある。

ADHDの原因は脳のドーパミン、ノルアドレナリンのシステムがうまく動いていないから、という仮説で説明されています。

このため、薬物療法によりドーパミン、ノルアドレナリンのシステムを整えることで病状は軽快していきます。
「わざと」ではなく、「ダメ人間」でもなく、病気だから今の症状があり、困っているのです。
ストラテラはシナプス間隙のノルアドレナリン、ドーパミンの量を増やすことができるADHD治療薬です。
服薬開始後4-6週間で効果が出てきます。

服薬した結果として、「いままで、みんながなんとなくできていたことが、一生懸命やらないとできなかったが、治療により自然にできるようになってきた」「なんとなく落ち着いて考えられるようになった」「自信がついてとらわれなくなった」「大人になってからでも治療するとよくなることがわかった」「生産性があがった」「対人面で落ち着いた」「気分が落ち込まなくなった」「自律神経症状が楽になった」
といった変化として現れてきます。人によって効果の現れ方は違いますが、生活しやすくなる感覚が出てきます。
ただし薬はもちろんすべてではありません。自分でも生活習慣を変える努力は必要です。薬の効果はそれを後押してくれるものです。

主な副作用は、気持ちが悪い、食欲不振、頭痛です。薬の量を減らしたり飲み方を工夫することで副作用は出にくくなります。数パーセントに体質的に副作用の出やすい人もいます。心配な人は主治医に質問してください。

安全性ですが、ストラテラには依存性、習慣性はまずありません。突然中断しても問題ありません。

薬は少量から始めます。最高用量は120mgですが、少量でも劇的に症状が改善するケースがあるのでまずは治療を開始してみてはいかがでしょうか。副作用が出ても服用方法を工夫することで、薬が飲めることもありますのでまずは医師と相談してみましょう。

効果が見られれば一年程度服薬していただいて、いい生活習慣が身についたら減薬します。

生活をしやすくするための工夫
行動の流れを自動化する
物の置き場所を決める
ゴミをこまめに捨てる。洗い物を済ませて寝る。
なくしそうなメモはなくすことを前提に写メをとる。
時間の余裕を持たせて行動する。
とにかくメモを取る。
予定表をつくる。
時計やタイマーを駆使する
忘れ物防止用の籠を作る。玄関に置いておいて、忘れそうなものはそこに入れておく。
マニュアルをつくる。
優先順位をつけて1つずつこなしていくこと。全部やろうとはしないこと。
衝動買いのある人はクレジットカードをもたないこと。
治療効果は期待できるので、薬物療法を気長に続けること。
障害の名前に甘えることなく自ら努力することも大事ですよ。

ご家族へ
ご家族も今まで大変だったことでしょう。これからはドクター、心理士、職場の人などみんなで対応を考えてきましょう。
是非ご本人のよき理解者・支援者になってください。
本人に言いたいこともたくさんあるかと思いますが、怠けているのではありません。本人への要求は控えめにお願いします。言いたいことの半分は我慢するようにしてください。責めすぎると本人の自尊心がますます低下してしまいます。親御さんも人生を楽しみましょう。ご本人の症状に巻き込まれすぎては双方が倒れます。時には親御さんも遊びに出ましょう。双方ともに適度な距離感が大事です。

職場の方へ
ご本人の特性に合わせた職場配置をお願いいたします。
指示の仕方にも工夫が必要です。
指示は一つずつ簡単明瞭にお願いします。
口頭だけではなく文書で指示をしていただけると本人の理解が増します。
作業の進行状況は随時確認してあげてください。
締め切りの前に、あらかじめチェックする日を設けてあげてください。
できなかったことではなく、できたことをほめてください。叱責は逆効果になることが多いのです。
ご本人のよき理解者・支援者になってください。

通院、服薬には大きな経済的負担が伴います。自立支援法の利用もご検討ください。
障害者枠での就労には手帳を取得するとよいでしょう。